少女は偽りの恋
「その教授さ、ヒトトセって苗字なんだよな。」
答えたのは、壬生藜だ。
「ヒトトセ?」
聞き返したのは、ツグミだ。
「何がおかしいの?」
首を傾げ、小都音の方を見る。
すると小都音は全く面白くなさそうな顔をした。
「ヒトトセなんて、珍しくないじゃないですか。」
頬杖を付き、小都音は言う。
しかし藜はそんな様子の小都音を見ても、全く引かない。
「いや、そのヒトトセっての漢字が…」
「春夏秋冬でしょう。」
ズバリと小都音は答えた。
藜は目をパチクリとさせ、
ばつが悪そうに「よく知ってるね。」と苦笑いをしながら頬を掻く。
決まりが悪い時に彼のする癖だな、とツグミは初対面ながらも察しがついた。
「当たってたの?」
小都音は悪戯っぽく目を瞑り鼻で笑った。
「え、知らないで当てたの?」
と吾妻昌巳は、驚いた様に首を傾げる。
ツグミも驚いた。
「ヒトトセって、一年って書くでしょう?
変な名前って言うから、四季を指してるんじゃ無いかなって。
日本語にはよくありますものね。
まぁ、只の当てずっぽうでしたけど。
春夏冬って書いて、アキナシって読む苗字もありますの知ってましたか?」