俺様彼氏の甘い罠
休憩室に戻って来てから
私は何も話さなかった。
・・・・”話せなかった”。
目の前で綺麗な茶髪が揺れる。
心配そうにお兄さんに顔を
覗き込まれて、優しい言葉を
何度も掛けられたけど
返事ができなかった。
「 ・・・・澪ちゃん? 」
「 ・・・・ 」
「 どこか痛い? 」
「 ・・・・ 」
ただ一点を見つめて、
目が乾いていくからか
それとも泣きたいからか
段々目に涙が溜まっていって、
それがまたお兄さんに心配を
掛けてしまっていた。
「 ・・・結花、呼んで来ようか? 」
私の代わりにテーブルを
1人で頑張ってくれている
結花ちゃんを呼びに行こうと
立ち上がったお兄さんの裾を
きゅっと掴んで、首を振ったら
苦笑したお兄さんが再度
私の目の前に座り込んだ。