妖狐の姫君


「かわいらしい女の子ですね。そんなに驚かないで下さい。むしろ僕らのほうがびっくりしているんだから」




狼に離すように仕向けると逃げるように離れていく。


放された腕は力もなく地面に落ちてストンと尻込んだ。



周りの妖怪を差し置いて私と同じくらいの年齢の男の子はしゃがみこむ。



「たてる?」



さっきまでの口調とは優しさを含んだ声で私の手を握る。



温かい……。



泣いてしまうくらいに人の温かさが心を熱くさせた。


「君を迎えに来たんだ。主がそろそろ気付いたかもしれない」



周りには聞こえない小声で言う。



ほら、立って。



ライメイの声は魔法じゃないかと言えるくらい自然と体が立ち上がる。



幼い顔立ちが笑っている。


身長差はほとんどなかった。



アーモンドみたいに丸い瞳に綺麗な肌で艶のある黒の髪。



全てに欠点がなくて容姿端麗といえばこんな子を言うんだと思う。



「あの、ここは……」



「君のことは後で。先に屋敷に連れてくよ」



風を切るかのごとく速やかに妖怪たちの輪を切り抜けていく。



彼は繋いだ手を離さずに一直線に繋がる道を早足で掛ける。



速いっ。



彼の背中と揺れる白い着物に引っ張る手。



彼の背中が道しるべであって追い掛けるように早足になる。



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