魔王に甘いくちづけを【完】
「どうしよう・・・ラヴル様に叱られるわ・・・」


叱られて済むならまだいいわ。

もしも、このまま見つけることが出来なかったら、そのときは――――


リリィの小さな喉がごくりと音を立てる。

考えるだけで恐怖に身が竦む。



「ヤダヤダ!そんなことありませんように!きっと、ユリアさんは無事なはずよ」

廊下を歩きながら一人ぶつぶつと呟く。



1階にあるドアはあと一つだけ。

奥に見えるあの青いドア。

あそこにいなければ、もしかしたらここにはいないのかも・・・。

うぅん、ダメ。どうか、いますように――――



祈るような気持ちで、リリィは青いドアをそっと開けた。


――――恐る恐る覗き込んだ部屋の中。微かに薬品のにおいがする。

一番奥の窓際にあるベッドの上でスゥスゥと寝息を立てるユリアの姿を見つけた。

リリィは大きな息を吐いて、ドアに寄りかかって仰ぎ見た。

瞳に、無機質な天井が映る。

少しの間動くことが出来ずそのまま留まった。

目覚めた時、一番最初に頭に浮かび口から出た言葉は、お腹空いた、でもなく、ここはどこ?、でもなく“ユリアさんはどこ!?”だった。

起きぬけからずっと探していた姿。

安心してすっかり力が抜けてしまった。



「あぁ、もう・・・良かったぁ・・・」



これで何とかお仕置きを受けることは免れたわ。

でも、あの頬のガーゼは・・・やっぱり、怪我をしてるんだ。


傍に近寄り、布団をそっとめくると痛々しい姿が瞳に映る。

包帯があちこちに巻かれ、薬品の匂いがツンと鼻についた。



「ユリアさん・・・私のせいだわ・・・ごめんなさい・・・私の力が足りなくて・・・」


―――でも、これくらいなら・・・。

これならきっと、ラヴル様なら、すぐに治せるはずだわ。

なんとかルミナの屋敷まで運べないかしら―――



ユリアの顔を見ながら思案を巡らせる。

リリィには、ここがどこかも分かってはいない。

窓の外を見ると、何処までも木立が続いていて、深い森の中に来てしまったことだけは分かる。

ここからラヴルの待つルミナの屋敷まで近いのか遠いのか。




―――おじい様、私どうしたらいいの?


・・・・っ!・・・。


誰か来たわ。
< 118 / 522 >

この作品をシェア

pagetop