魔王に甘いくちづけを【完】
“ユリア様。本日は妃教育はお休みするように、と王妃様からの御伝言で御座います。マリーヌ講師より、書類をお預かりしております。どうぞ・・・”
リリィが侍従長に呼ばれて退室した後、バル付き執事のパッドがそう伝えてきた。
書類を受け取って中身を確認すると、几帳面な文字で書かれた手紙と、数枚の紙が入っていた。
手紙には事件に対するお見舞いの言葉と、出来れば予習を、と書かれていた。
同封されてる紙を見ると、問題がびっしりと書かれていた。
―――出来れば、でいいのよね・・・・?
こんな日だから、妃教育はもちろんのこと、今日は、リリィたちの見習いの勉強もお休みになったそう。
で、時間のある見習い侍女と使用人たちが総出で午前中いっぱいをかけて城宮の中の清掃を済ませたらしくて。
「ユリアさんには見せること出来ないけど、完璧に綺麗になったんだよ!」
ランチを前に部屋に訪れたリリィが鼻を鳴らしてそう言った。
ザキに自慢することが一つ増えちゃった、と楽しげに笑って、待たせていた他の見習いの子たちと一緒に食堂に行った。
リリィは逞しい。
どんな状況でも受け入れてそれを楽しむことが出来る。
ジークの家でもそうだったっけ。
そういうところがとても尊敬できて、大好きで、羨ましいと、思う。
きっと、同じ見習いのあの子たちもそんなリリィが大好きなんだろうな。
私も、あんなふうになれたら、と思う。
頑張る気持が湧いてくる。
午後は、マリーヌ講師の宿題をしてみよう―――
と、思っていたけれど。
午後になると、王妃様が「お見舞いですわ」と仰って部屋にたずねて来られた。
本当はこちらから伺うべきなのに、とわざわざ遠い宮から来られたことに恐縮していると
「当然ですわ。
貴女は私の娘ですもの」
と優雅に笑んだ。
そのあとすぐにホゥ・・とため息を漏らして、申し訳なさそうに顔を歪めた。
「私、大変申し訳なく思っておりますのよ。
ごめんなさいね、貴女を危険な目に合わせてしまって。
さぞかし、恐ろしかったことでしょう?」
「・・・はい、一歩も動くことが、出来ませんでした。王子様が来られなかったら、と思いますと、情けないことに、今も恐怖に震えてしまいます」
体を両手で抱き締める仕草をしたら、寄せられていた美しい眉がさらに寄せられていった。
瞳はきらきらと潤んでいる。
「そうでしょう。
そうでしょうとも・・・可哀想に―――」
声も潤ませそう言って、ハンカチを取りだして目頭に当ててそっと拭う。
「そんな貴女を残していくなんて・・・・。
あの子ったら、本当に困ったものですわね。
今日一日くらい、出発を延ばしてくださればいいのに。
こんなに今にも折れそうな、か弱い貴女ですもの。
一日中傍について居ても誰も文句は言いはしませんわ。
なのに行ってしまって・・・。
王も王ですわ。
何故、お止めにならないのかしら」
リリィが侍従長に呼ばれて退室した後、バル付き執事のパッドがそう伝えてきた。
書類を受け取って中身を確認すると、几帳面な文字で書かれた手紙と、数枚の紙が入っていた。
手紙には事件に対するお見舞いの言葉と、出来れば予習を、と書かれていた。
同封されてる紙を見ると、問題がびっしりと書かれていた。
―――出来れば、でいいのよね・・・・?
こんな日だから、妃教育はもちろんのこと、今日は、リリィたちの見習いの勉強もお休みになったそう。
で、時間のある見習い侍女と使用人たちが総出で午前中いっぱいをかけて城宮の中の清掃を済ませたらしくて。
「ユリアさんには見せること出来ないけど、完璧に綺麗になったんだよ!」
ランチを前に部屋に訪れたリリィが鼻を鳴らしてそう言った。
ザキに自慢することが一つ増えちゃった、と楽しげに笑って、待たせていた他の見習いの子たちと一緒に食堂に行った。
リリィは逞しい。
どんな状況でも受け入れてそれを楽しむことが出来る。
ジークの家でもそうだったっけ。
そういうところがとても尊敬できて、大好きで、羨ましいと、思う。
きっと、同じ見習いのあの子たちもそんなリリィが大好きなんだろうな。
私も、あんなふうになれたら、と思う。
頑張る気持が湧いてくる。
午後は、マリーヌ講師の宿題をしてみよう―――
と、思っていたけれど。
午後になると、王妃様が「お見舞いですわ」と仰って部屋にたずねて来られた。
本当はこちらから伺うべきなのに、とわざわざ遠い宮から来られたことに恐縮していると
「当然ですわ。
貴女は私の娘ですもの」
と優雅に笑んだ。
そのあとすぐにホゥ・・とため息を漏らして、申し訳なさそうに顔を歪めた。
「私、大変申し訳なく思っておりますのよ。
ごめんなさいね、貴女を危険な目に合わせてしまって。
さぞかし、恐ろしかったことでしょう?」
「・・・はい、一歩も動くことが、出来ませんでした。王子様が来られなかったら、と思いますと、情けないことに、今も恐怖に震えてしまいます」
体を両手で抱き締める仕草をしたら、寄せられていた美しい眉がさらに寄せられていった。
瞳はきらきらと潤んでいる。
「そうでしょう。
そうでしょうとも・・・可哀想に―――」
声も潤ませそう言って、ハンカチを取りだして目頭に当ててそっと拭う。
「そんな貴女を残していくなんて・・・・。
あの子ったら、本当に困ったものですわね。
今日一日くらい、出発を延ばしてくださればいいのに。
こんなに今にも折れそうな、か弱い貴女ですもの。
一日中傍について居ても誰も文句は言いはしませんわ。
なのに行ってしまって・・・。
王も王ですわ。
何故、お止めにならないのかしら」