魔王に甘いくちづけを【完】
「そうか?案外、パーティーに誘われて、出掛けてるかも知れんぞ?」

「あぁぁっ・・・そうかもしれねぇっすね」


・・・有り得る。

俺がいねぇと分かったあいつらが誘うのは、自然の流れだ。

で、リリィも行きたがるだろう。

アイツ、楽しいの好きだからな・・・



「・・・でも、大丈夫っす。ジークの薬もあるし、それに、アイツには・・・とっておきがあるんで。それに、信じてますから。・・・それより、バル様の方が気が気じゃねぇでしょ」



もや~んと沸き起こる不安を振り払い、自分から話題を遠ざける。

それにはコレが一番だ。



「あぁ、まぁな。彼女は大切な預かり者だからな―――――・・・アリを、つけておいた。彼なら安心だろう」



―――預かり者?まだそんなこと言うんすか、この方は。

妃候補にまでして、手届かねぇようにしてるくせに。

いらいらして揺さぶりたくなる。

いい加減正直になれよ、と思う。



「鉄の心っすか。魅力に負けてないといいっすね」

「っ、・・・そう言うな、不安になるだろう」



てきめんに動揺して、ガバッとこっちを向いた。

その素直な反応、そのまんま、彼女に向けろってぇの。



「いや、冗談っすよ。彼女もジークの薬持ってっから大丈夫っす」

「アレか・・・」


肩を落としつつ呟いたその顔が歪んで苦々しい笑みを作る。

その様子を見て一緒に苦笑する。

薬を吹きつけられた男の状態を思い出したからだ。


・・・あんな目には、合いたくねぇ・・・。


「ところで、ザキ。気になったんだが・・リリィのとっておきとは、何だ?」

「あぁ、それっすか。実は口止めされてて、内緒なんすが。知られんの、恥ずかしがるんすよ。でも、バル様なら仕方ないっすね―――」


誰にも言わねぇで下さい、と耳打ちされるバルの瞳が見開いていく。


「そうなのか・・・。それは、ジークも知らんことだな?」

「あぁっと・・・それ自体は、多分知らねぇっす。俺だけ――――」











――――ザキとバルがそんな会話をしてるとは、露程も知らないリリィ。

今、噴水のベンチでディーンと過ごしてるところだが。

時が経つにつれ、だんだん彼の雰囲気が変わってきていた。


最初、優しいお兄さん風だったのに、見つめてくる瞳が熱を放つようになってきていた。

膝の上あたりにあった腕は、いつの間にかベンチの背もたれの上に乗っている。

体は完全に此方を向いていた。

指先が、そっとリリィの赤毛に触れた。
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