転校生は憧れの人
「アイツ、熱だしよってん」
……熱? 吉野くんが?
こんなこと言っちゃ悪いけど、いい意味で吉野くんとは全くの無縁だと思っていたその言葉に、私は暫し固まる。
「吉野でも熱だすんだ」
「吉野くん、大丈夫なの?」
「おう、大丈夫大丈夫。アイツな、楽しみにしすぎて浮かれとったら、何か突然発熱したらしいねん。……まあ、今日の朝に連絡あってんけど、吉野の奴めっちゃ落ち込んどったわ」
そうなんだ。
私は、吉野くんが不憫に思えて仕方なかった。
っていうか、浮かれて発熱ってどういうことなんだろう。
「でもまさか、言い出しっぺが来れなくなるなんてね」
梓ちゃんは半笑いしながら呟いた。