転校生は憧れの人
「嘘? ……え、憐くん騙したの?」
「まあね。ってかやっぱ全然駄目じゃん。この調子じゃ、いつまで経っても出られないよ」
「えっ、嫌だよ」
憐くんのその言葉に、私はゾッと身震いがした。
「何か滝川と椎名いないみたいだし、俺が先に行ってアンタに迷子になられても困るんだよね」
ドキッ。
いつもそうだ。憐くんは、何も考えずにサラリと素敵な台詞を呟く。
そして、さっき憐くんに言われて初めて2人の影が見あたらないことに気がついた。
……絶対、私のせいだよね。
「どうする?」
「……じゃあ」
私は足の震えをどうにか止めながら立ち上がると、コクリと頷く。
だけどやっぱり、腕を持つのは何だかおこがましい気がして、私はそっと憐くんの服の裾を掴んだ。