転校生は憧れの人
「あ! あれって、出口かな?」
暫く歩いた後に見えた、小さな光。
ここまでの道のりが特別長く感じたのは、きっと恐怖とかそんなのじゃない。
しっかり握った彼の裾から、私はただ緊張が伝わらないでとだけ祈っていた。
「お疲れ様でした」
出口から出ると、梓ちゃんと滝川くんは既に外にいて、私達を迎えてくれる。
「2人とも遅かったね。いつの間にかいなくなってて、びっくりしたよ」
「ホンマな! お前等、中でイチャついとったんとちゃうやろな?」
ニヤニヤとしながら、じぃーっと私達を睨むようにして見る滝川くん。
い、イチャついてなんかないよ。
「そんなんじゃないから」
「すました顔しても、無駄やで憐くん?」
「何が」
相変わらず憐くんの表情はクールそのもので、滝川くんの黒い笑みにも全く動じようとしなかった。