転校生は憧れの人



「あ! あれって、出口かな?」



暫く歩いた後に見えた、小さな光。


ここまでの道のりが特別長く感じたのは、きっと恐怖とかそんなのじゃない。


しっかり握った彼の裾から、私はただ緊張が伝わらないでとだけ祈っていた。



「お疲れ様でした」



出口から出ると、梓ちゃんと滝川くんは既に外にいて、私達を迎えてくれる。



「2人とも遅かったね。いつの間にかいなくなってて、びっくりしたよ」


「ホンマな! お前等、中でイチャついとったんとちゃうやろな?」



ニヤニヤとしながら、じぃーっと私達を睨むようにして見る滝川くん。


い、イチャついてなんかないよ。



「そんなんじゃないから」


「すました顔しても、無駄やで憐くん?」


「何が」



相変わらず憐くんの表情はクールそのもので、滝川くんの黒い笑みにも全く動じようとしなかった。




< 82 / 309 >

この作品をシェア

pagetop