恋のレシピの作り方
「……」

 すると麗華は喉の奥で零れそうな笑いを堪えて口元を歪めた。


「ふふ……面白いわ、それがあなたの答えなのね? ふふ……あはは」

 ―――狂ってる。

 人気のない廊下で、麗華の高笑いだけが響いている。全く何を考えているのか窺えない麗華に、不気味なものさえ感じてしまう。

 
「私がローザンから身を引くだなんて、そんなの……そんなことできるわけないじゃない!」


「……なんですって?」

 奈央が声を荒らげて言うと、麗華の表情から笑みが消え、無表情になったかと思うと、眉間に皺を寄せて険しいものに変わっていく。
 奈央は気圧されまいと生唾を呑み込むと、何か言おうと口を開いた麗華を押し切って言葉を並べた。



「麗華さん知らないんですか? 本当にいい女っていうのは、仕事も恋愛も全部手に入れるだけじゃないんですよ?」

「……―――」


 麗華は奈央を睨みつけるようにして見ている。蛇に睨まれても噛み付く獲物だっている。目を逸らしたらきっとそこにつけこんでくる―――。
 
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