恋のレシピの作り方
(な、なんなの、あの人!? 贔屓しないって、そんなことわかってるわよ!)


 今まで職場の人間が、自分以外全員男だったことなんか幾度とあった。


 だから今更なんとも思わない、女だからって見くびられないように気丈に振舞うしかないのだから。

「……」

 そのせいで柔軟性のないキツイ性格に思われたこともある。けれど、シェフという世界は女の子していてはやっていけない世界なのだ。


 私は絶対負けない―――。


「すみません、気分を害されたら一条に代わって謝罪します。しかし彼はあんな性格でも腕の立つシェフです、きっとあなたの為にもなりますから……」

 メラメラと士気が上がってきたところに宥めるような羽村の穏やかな笑顔が、奈央のささくれ立った気持ちを和らげた。

「羽村さん……私は大丈夫です。ありがとうございます」
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