夢の外へ
さっきのカップみたいに投げつけるようにそう言った後、あかりさんは逃げるようにその場を去った。

千景は動かなかった。

あかりさんの後を追おうともしなかった。

「あの…お客様」

駆け寄ってきた店員が、恐る恐ると言うようにおしぼりを差し出す。

千景は手でそれを制すと、財布からお札を出した。

「つりはいらない」

それだけ言うと、千景は歩いてその場を去った。

千景が出て行ったのを見送ると、
「ちょっと、今の何!?」

「彼女さんすごかったねー!」

あちこちから声が飛び交った。
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