夢の外へ
「なんか彼氏さんかわいそうじゃない?」

「でも話的には彼氏さんが悪いって感じだよね」

どのテーブルもその話題で持ち切りだ。

そりゃ、そうだよね。

美男美女で、しかも何やら険悪な関係を漂わせて。

誰もがみんな何事かって噂するよね。

ガヤガヤと騒ぐ店内に、私はそんなことを思った。

「――千景…」

彼の名前を呟いたら、この場にいる自分が情けなくなった。

私の前につきあってた相手がいたんだね。

しかも、あんな美人で。

だったら私じゃなくてもよかったんじゃない?
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