夢の外へ
「杏樹!?」

私の声に、頭をさすりながら杏樹が起きあがった。

「大丈夫…?」

ケガなんかしてないよね?

「大丈夫。

ちょっと、タンコブができたかも」

杏樹が笑って答える。

私は笑うことができなかった。

コンコン

ドアのたたく音がした。

「どうぞ」

私は呼びかけた。

ガチャッと、病室のドアが開く。

入ってきた人物に驚いた。

「――千景…?」

呼んだ私に、千景は微笑む。

ああ、千景だ。

少し伸びたヒゲがやつれた感じを出していたけど、やっぱり千景だ。

目の前にいるのは、千景だ。

目を覚ましたんだ…。
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