夢の外へ
「――そんな理由、ですか?」

そう言った冷牟田さんの声は、恐ろしいくらいに静かだった。

「――えっ…?」

私はどう返せばいいのかよくわからない。

「そんな理由で人生の伴侶を探しにきたのかと言っているんです」

…ちょっと、何これ。

もしかして…いや、もしかしなくても怒ってる?

「別に、勝手じゃないですか。

私だってもう29ですし、さっさと仕事から解放されて家庭に入りたいんです。

今の彼氏は…」

「彼氏いるんですか?」

しまった!

そう思ったけど、もう時すでに遅し。

「彼…私を専業主婦にするほどの年収を稼いでいないんです。

そのうえ出世欲もないみたいで、私と同い年なのに未だにヒラのペーペーで」
< 16 / 163 >

この作品をシェア

pagetop