夢の外へ
何を?

千景はまた私の頭の中を読んだのか、
「愛はない、上辺だけの結婚だってこと」

「――あ、ああ…」

私は首を縦に振ってうなずいて答えた。

そうだよ、私たちはこれから愛のない結婚をするんだよ。

お互いの利害のためにだけに、上辺だけの結婚をするんだよ。

「今日はありがとう。

おやすみなさい」

「ああ、気をつけろよ」

私は車を降りた。

私が降りたのを確認すると、車はエンジン音を立てて発車した。

――今すごく名残惜しいって思った

「名残惜しいって…」

千景の言葉が、頭の中を離れなかった。
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