夢の外へ
そう聞いてみたら、
「別に」

千景は背中を見せた。

「なっ…!」

何よそれー!?

すっごい気になるじゃないの!

「シャワー浴びてきたら?

酒臭い」

「ぐっ…」

そう言った千景に、私は黙る以外何も思い浮かばなかった。

ベッドから降りると、千景の部屋を出て行った。

「あいつ、バカだな」

部屋を出てバスルームへ向かった千景の私への呟きは、もちろん耳に届くことはなかった。

ムダに広い、全面ガラス張りのバスルーム。

点々と、まるで宝石のように輝くビルの灯り。

「ドラマのセットじゃあるまいし…」

頭から熱いシャワーを浴びながら呟く。

40度の熱いシャワーはアルコールでぼんやりしている頭を醒ますのには充分だった。
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