キミが望むのなら
あぁ、やっと悠君が家族に本音を言ったんだね……
今まで一度も言えてなかったんだろうね……
「俺が立派な4代目になるまで、ちゃんと生きろよっ!生きてくれよっ!!」
息も切れ切れに、必死な思いを、悠君はおばあさんにぶつけた。
「はぁ―……はぁ―……」
こんな必死な悠君をおばあさんも初めて見たのか、目を見開いて見てる。
「……俺、ずっと仕方ないって思ってた」
呼吸を整え、そしてゆっくりと落ち着いたように話し出した。
「ここしか俺の居場所はないし、継ぐのが俺の運命なんだ……。もう夢も持てないんだ……って……」
「……」
「でも違ったんだよ。夢を持てないことに不満を持ったこともあったけど、でもそれでも紺野呉服店を嫌いになったことはなかったんだ……」
静かに、ただジッと悠君をおばあさんが見ている。
「その時気付いたんだ。夢を持つもなにも、俺の夢は決まっていたって」
悠君もおばあさんをしっかりと見つめる。
「俺の夢は、ここを継いで立派な4代目になることだって……」
悠君の夢。
いつの時か、悠君がこんなことを言っていた。
――『夢をもたないなんて、つまらないね』
と……
それは、きっとあたしに向けて言ったのと、自分に向けてもの言葉だったんだろうな……