キミが望むのなら


―――――――――――……


「……くんっ……悠君っ!!」


「え?」


「え?じゃないよっ!どうしたの?お店出てからボーっとしてばっかりだよ?」


4年前……俺がプロポーズしたあの日より、少し伸びた髪の毛を掻き分ける桃香。


髪色もブラウンから黒色に染め直している。


「少し、昔のことを思い出していて……」


「昔?」


「そっ、桃香にプロポーズした日。あれから4年も経つんだな―って思ってさ」


「そうだね、もう4年か……」


あのプロポーズの後、桃香はそのまま九州の学校に進学した。



俺はてっきりこっちに戻ってくると思っていたのに、桃香はどうしても行きたい学校が出来たと言って、九州で進学した。



遠距離恋愛なんて、誰も好んでしたくない。


しかも婚約者になった彼女を、遠く離れたところに居させるのは不安だった。


だから、初めのうちは俺も納得していなかった。



でも、桃香の進学先を聞いて、何も言えなくなった。



桃香は、着物の専門学校に進学しようとしていたんだ。


「ここに入学して、ちゃんと卒業したら、悠君のところに行くね」


なんて言った桃香。



それなら文句なんて言わず、俺は待っとくしかない。



それから桃香はその専門学校に無事入学、そして2年後に卒業した。



< 306 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop