キミが望むのなら
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「……くんっ……悠君っ!!」
「え?」
「え?じゃないよっ!どうしたの?お店出てからボーっとしてばっかりだよ?」
4年前……俺がプロポーズしたあの日より、少し伸びた髪の毛を掻き分ける桃香。
髪色もブラウンから黒色に染め直している。
「少し、昔のことを思い出していて……」
「昔?」
「そっ、桃香にプロポーズした日。あれから4年も経つんだな―って思ってさ」
「そうだね、もう4年か……」
あのプロポーズの後、桃香はそのまま九州の学校に進学した。
俺はてっきりこっちに戻ってくると思っていたのに、桃香はどうしても行きたい学校が出来たと言って、九州で進学した。
遠距離恋愛なんて、誰も好んでしたくない。
しかも婚約者になった彼女を、遠く離れたところに居させるのは不安だった。
だから、初めのうちは俺も納得していなかった。
でも、桃香の進学先を聞いて、何も言えなくなった。
桃香は、着物の専門学校に進学しようとしていたんだ。
「ここに入学して、ちゃんと卒業したら、悠君のところに行くね」
なんて言った桃香。
それなら文句なんて言わず、俺は待っとくしかない。
それから桃香はその専門学校に無事入学、そして2年後に卒業した。