キミが望むのなら
就職先はもちろん、紺野呉服店。
それは俺も譲れなかった。
桃香がこっちに戻ってきた時、すぐにでも結婚!!と思っていたのに……
桃香はまたまた……
「4代目の奥さんとして認めてもらうまで、悠君とは結婚しない」
なんて言い出したから、さらに2年待った。
でも、これは桃香なりの夢の叶え方だったんだろう。
「あたしの夢って、悠君に影響されすぎだよね―……」
久しぶりに来た公園で、あのベンチに座り、夜空を見上げる。
「俺的には、同じ夢に向かってるみたいで嬉しいけど?」
懐かしいベンチは、やっぱり4年も経つと、ミシッと少し歪む音がする。
そんな音を聞いて「あぁ―……時は過ぎてるんだな―……」なんて感じる。
桃香と出会う前も、そんなことを確かめに満月を見に来ていた。
でも、今とはその気分も、気持ちも全然違う。
そして何より違うのは……
「ん?なに?」
「いや、何でもない」
桃香がこうやって隣に居て、当たり前に手を繋いでいられるということ。
「そう言えば今日、信二君と会ったんだよね?」
俺の手を握り返して、顔を覗き込んでくる。