スイートなメモリー
お風呂場のドアを閉めて、服を脱ぐ。
どうしよう。ものすごい緊張してる。
ブラウスのボタンを外す手が震える。
あまり待たせたら悪いと思って、急ぎめにシャワーを浴びる。
下着を付け直してバスローブを着て部屋に戻ったら、三枝君はベッドに腰掛けてコーヒーを飲みながら待っていた。
居てくれて良かった。安心した。
横に座って自分からキスしてみる。
大事なものみたいに扱ってくれるのが、とても嬉しくて素直に身を任せる。
そのあとのことは、あまりにも気持ちよすぎたために正直良く覚えていない。

どういうことだろうこれは。
私が男の人と寝たのが久しぶりだから良かったのだろうか。
それとも単純に身体の相性がいいということなのだろうか。
もしくは三枝学人という男が、本当は相当な女たらしで遊び慣れていて女のツボなど知り尽くしているということなのだろうか。
いずれにしても、私は「身体に溺れる」ということがあるのだとひしひしと感じている。
ベッドの中でこれまで言ったことのないようなことを口走ったような気がしてならない。
なにより気になるのは、朝帰る時に駅まで送ってくれた三枝君がものすごい笑顔で「もうホント良かった。思っていたよりずっと良かった」と繰り返していたことだ。
 ……次に二人きりで会えるのはいつだろう。
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