スイートなメモリー
「学人さん、何隠したの」
「や、隠したわけじゃないから」
「美咲」
「はい」
「ちょ、わー、やめてやめて。美咲ちゃん俺の上に乗らないで!」
雪花女王の命に従って、俺の隠した荷物を取り上げようとするのかと思いきや、美咲はソファに腰掛けた俺の上にまたがり、俺の両腕を押さえ込む。
俺の顔の前に差し出されるのは、窮屈なエナメルのワンピースに押さえ込まれた胸の谷間。
ああ、喜んでいいのかどうかものすごい微妙! 絶対もう雪花さんが俺の荷物あけているはずだし、見られたら絶対に……。
「この胸の谷間に顔を押し付けたら、俺はその態度について怒られるだけで、荷物見るのは勘弁してもらえたりとかしませんかね?」
美咲の身体を挟んで、雪花女王が荷物を開ける手を止めた気配がする。
「別に美咲のおっぱいに顔を押し付けても構わないけど、人様の奴隷に手を出したということで怒られるのは確実だし、そっちに気をとられて面白そうなネタを逃すなんてのはもったいないから、その場合は、美咲のおっぱいについても怒るし、荷物も当然開けるよね」
「ああ雪花様っ、おっぱいおっぱい言わないでくださいっ。美咲恥ずかしい!」
「やめて荷物あけないで! 俺の顔に自発的に胸を押し付けないで!」
踏んだり蹴ったりとはまさにこのことか。
美咲の柔らかい胸が俺の鼻先へと押し付けられるが、荷物のことが気になって役得とか思うどころじゃない。
役得だったとしてもどうせあとから怒られるのもわかってる。
しかもそれって、美咲を喜ばせるためで、そういう俺の立場は噛ませ犬って言うんじゃないの?
ビニール袋から俺がさっき買って来た品物が取り出されたとおぼしき音がする。
そしてその直後に、ほら。ね。
「やあだー! 学人くんてばいやらしいー!」
大爆笑の雪花さん。
それを聞いて、俺の顔から胸を外して振り向いた後に、やっぱり大爆笑して雪花さんのもとに、いやむしろ俺の買い物の側に素早く移動する美咲。
< 99 / 130 >

この作品をシェア

pagetop