ラッキービーンズ【番外編】
「ちょ、離して！　私、戻んなきゃ！」

「戻ってどうするの？　色仕掛けしてるリアちゃんに、私の彼取らないでー！って叫ぶの？　メイちゃんが？」

「……」

「メイちゃん水嶋さんのこと信用してないの？」

「そういうわけじゃ……」


腕をつかまれたまま押し問答をしている間に、エレベーターは１階まで到着してしまった。


八木原くんが私の手を引くからそのままエレベーターの外に二人で出る。

エントランスに出たところで、八木原くんはようやく私の手を離してくれた。


けれど、勢いを失った私はそのままエレベーターに戻ることができずにその場に立ちつくした。


「メイちゃん」

「えっ？」

「そんな深刻？」

「え、えと……」


なんでも悪い方に考えるのは私の悪いクセだ。

傍から見れば水嶋のことを信用していないように見えるのかもしれない。


それに指摘された通り、乗り込んで行ったところで私に何か言える度胸があるとも思えない。


「コンビニ行こ？」


私は眉間にシワを寄せたまま、八木原くんの差し出す手に向かって歩き出すしかできなかった。
< 29 / 68 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop