ラッキービーンズ【番外編】
答えあぐねていると、水嶋は私の腰に腕を絡めると、ひょいっと身体を持ち上げて自分の上に乗せてきた。


「な、なに?」

「今度はメイが上で」

「えっ」


両肩をつかまれて上半身を起こされて、胸を手で隠したまま戸惑う。


「ヤギと消えて俺に悪いと思ってたんでしょ?」

「う、うん」

「謝りたくて夜道走っちゃったんでしょ?」

「……うん、だけど」

「だけどなに?」

「お、怒ってなかったんじゃ……」


おそるおそる問うと、水嶋はクスッと笑って胸の前でクロスさせている私の腕を解いた。


「怒ってないフリ。大人なフリ」

「えぇ~……」

「そんな俺も好きだっつったじゃん」

「う、うん」


もちろん妬いて心配してくれたんだったら、それを嫌だなんて全然思わないけど……。


「じゃ、俺のお願い聞いてくれるよね?」

「……なんかズルくない?」

「たまにはメイに襲われたい」


襲われたい、と言われても……。


水嶋の上にまたがった体勢のまま、当の水嶋は完全放置で自分から私に何かするつもりはないらしい。


これって私が自分でしろってことだよね……。


状況を理解すると、かあっと頭に血が上って、顔が熱くなった。
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