渇望の鬼、欺く狐
 それらの感情は、狐の中から罪悪感すらも引き出してしまう。



 ごめんなさい。

 狩りが下手で、ごめんなさい。

 上手く歩けなくて、ごめんなさい。

 出来ない事だらけなのに、甘えたりしてごめんなさい。



 何度も何度も、心の中で皆に謝罪を繰り返した。

 だけど目の前には、すでに誰の姿もありはしない。

 自分の足が、全て健康だったのなら。

 そしたら皆、自分を置いて行く事はなかったのだろうか。

 母親に、あんな辛そうな表情をさせる事も。

 こんな。

 呼吸すら苦しくなる程の孤独を感じる事も、なかったのだろうか。

 わからない。

 考えても考えても、狐は答えに辿り着く事が出来なかった。

 自分の取った選択が、正しかったのかどうかという答えにも。

 これまでの自分の行いは、間違いだったのかどうかという答えにも。


 家族は自分を置いて行ってしまった。


 これだけが狐を取り巻く事実であり、全てだった。



 

 
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