渇望の鬼、欺く狐
 そもそも、何故狐は結界の中に入る事が出来た?

 結界を施しているから、境界まで近付く事は出来ても、中に入る事は出来ないハズなのに。

 そのうち居なくなるか勝手に息絶えるだろうと、考える事はしなかったけれど。



『……どうやら、お前は妖力が他より強いのかもしれないね』



 未だ甘えてくる狐に漏らした言葉。

 きっと狐の生命を支えている物は、狐の体力ではなく、妖力の方なのだと理解する。

 狐にどれ程の妖力があるのかは知らないが。

 これでは、いつ息絶えるかもわからない。

 こちらの溜息など気にする事もしない狐は、飽きもせず私の手を舐め続けていて。



『……とりあえず。その痩せこけた体と小汚い体は、どうにかしたらどうだい』



 そう口にしてしまった心情には、諦めが含まれていたように思えた。

 一つ息を吐き、抱き上げた狐。

 軽々と持ち上がるその体からは、抵抗の色すら見受けられずに。

 社の近くにある川まで移動して、その体を地面へと降ろし自分も屈めば、狐はこちらを見上げる事で疑問を伝えているようだった。



『喉も渇いているだろう? とりあえず飲むといいよ』



 川の水を手で掬い、狐へと差し出す。

 ペロリと舐めた狐は、前足で屈んでいた私の体をトンと叩いた。





 
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