渇望の鬼、欺く狐
「父ちゃん、今日は何して遊ぶー?」



 まるで普段通りの少年の言葉。

 狐もまた、普段通りに笑みを浮かべながらに答えて見せた。



「今日はかくれんぼだ。いいか? 鬼は、あの大きな木のとこで十数える事」


「わかった!」



 合図と共にじゃんけんをすれば、狐の勝利となった。

 少年は、気付いてはいないのだ。

 自分が最初に出す物が、いつも同じである事を。

 繰り返し、何度も少年とじゃんけんをしている狐だけが、少年のその癖に気付いていた。



「じゃあ十数えるまで動くなよ」


「わかってるよー」



 大きな木へと向かう少年。

 狐は、暫し自分の目に少年を映した後、体の向きを変えて少年へと背中を向けた。

 少年の足が、狐に指定された大きな木へと近付いていく。

 あと数歩というところで、少年は思わず足を止めてしまっていた。

 何かが、おかしい。

 何が、なんて事は少年には理解出来ない。

 だけど違う。

 自分の今踏んでいる地面と、あの木の下の地面が。

 自分の今居る場所と、あの木の場所が。

 何にも阻まれていないハズの場所に、どうしてだか違いを感じてしまって。

 気付いた違和感は、気味の悪さとなって少年へと伝わってしまった。



 
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