渇望の鬼、欺く狐
「今日は社で寝ていい日だから、ずっと藍と居るって決めてきたんだもん」


「ずっと居れるから、先に買出しに行ってくれると助かるんだけどね」



 かけた声に、雪は完全に拗ねてしまったけれど。



「……今日は抱っこして寝てよ?」


「あぁ。抱いてやるし、たくさん撫でてやるから頼むよ」



 雪の要望にこちらからも提案した事で、何とか雪は買出しへ行ってくれる事となった。

 これでしばらくは、旭の散策時間が短くなるだろうと僅かに安堵した胸中。

 その安堵は心配を湧き起こさせていた旭により、かき消される事となる。

 視線の先でこちらに背中を向けて、どうも一定の場所から動かないと思えば。



「……旭、それは石だから。食べれないよ」



 手の平と同じ程の大きさの石に噛り付いて、口に含ませようとする姿に思わず零れ落ちた溜息。

 外で遊ぶ事が楽しいなら、それはそれで本当に一向に構わないのだ。

 ただ何でも口に入れてしまうから、こちらの目が離せないというだけで。



「ほら、口の中にまで砂が入ってしまってるよ。そろそろ中に戻ろう?」


「あ、あー! あー! やー!」



 首を振りながら拒否を示す旭を、口内を洗うという事を理由に、半ば強制的に社の中へと連れ帰ったのだった。
< 48 / 246 >

この作品をシェア

pagetop