渇望の鬼、欺く狐
「雪。丁度良いところに来てくれたね」


「うん? 何々ー? もしかして、俺に会いたかったー?」


「あぁ、凄く会いたかったよ」



 頭を撫でてやれば、雪は嬉しそうにその顔を綻ばせた。



「悪いが、今から人里に行ってもらえるかい?」


「え」


「旭が興味を持ちそうな玩具を、いくつか見繕ってきてもらいたいんだ」



 瞬時に眉間に皺を寄せた雪が、表情と同様に不満気な声を漏らす。



「……寒いからやだ」


「寒いから問題なんだ。あれでは旭が、そのうち熱を出してしまうだろう?」


「……でも寒いからやだ」


「そもそも、お前に寒さなんて感じるのかい? 私もそうだけど、苦痛になる程の体感温度なんて存在しないと思うが?」



 鬼である私と、化け狐である雪。

 それなりに体温はあるし、春の風を暖かいと思う事が出来れば、今日のような冬の風を冷たいと思う事も出来る。

 だけどその体感温度は、体を纏う妖力のお陰で一定の場所で止まってしまい、暑いや寒いを感じる事はない。

 夏の暑さでやられる事もなければ、冬の寒さに凍える事もないという機能は、妖力を持たない生物からすれば羨ましい事柄なのだろうか。



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