渇望の鬼、欺く狐
 だけど狐は、こうも思う。



「……旭。だったらもう、ご馳走様するかい?」


「……いや」



 あの時、鬼が気紛れを起こしてくれなければ。



「なら土産の話は後だ。先に食べてしまいなさい」


「……っ、うぇ、ぇっ……」



 赤子を拾う事をしなければ。



「ほら、美味しいだろう?」


「……うっ、ふぇ、……うん」



 きっと、今も自分は鬼と二人きりで。

 それはそれで満たされていただろうし、幸せだったのだろうとは思うけれど。

 やはり今は。

 自分と鬼と赤子の三人で過ごす日々が幸せだから。

 あの時、鬼が気紛れを起こしてくれて良かったのだろう、と。
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