黒猫*溺愛シンドローム~Plus~



「ち…違っ。私は悪くな…」


俺の姿を見るなり、大きく目を見開いて。

数歩後退った後、彼女はすぐさま弁解を始めた。


「ナツメが…」


あたふたしながら、彼女が視線を向けたのは、すぐ傍に寝転がる大きな塊。…おそらく“ナツメ”だ。

入り口に背を向けて横たわっていた彼が、俺の視線に気づいたのか…のっそりと起き上がる。


「私はちゃんと、約束は守っ…えっ?」


俺は素早く彼女の傍に近づいて…

そのまま、ぐいっと。
その身体を腕の中へと引き寄せた。


「だ…だから、私はちゃんと…」


何を勘違いしているのか、俺から逃れようとバタバタと暴れ出す彼女。

それを押さえ付けながら、俺は“ナツメ”のほうを見た。



……うわぁっ。


眠そうな目をこすりつつ、気だるそうに俺を見上げたその姿に、思わず息を飲んだ。


…すっごい綺麗。

男の子、だよね?


うわぁ…
その深みを帯びた瞳とか、その毛色とか…

例えるなら…そう!
“ロシアンブルー”みたいな…

って、ダメだ。
そんな場合じゃなかった。

ちゃんと言わなきゃ。
確かめなきゃ。

そう決意して、口を開きかけた…ときだった。




「……アユムくん?」


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