黒猫*溺愛シンドローム~Plus~
事の起こりは、
数十分前―――……
「…あ。いた。」
いつものように。
くるみと修司の目を掻い潜って、やっとの思いでここまでたどり着いた私。
鍵もかけたし、これで一段落…と。
“定位置”で瞼を閉じた…とき。
タイミングよく、開いたドア。
「よかった。」
ビクッとして思わず立ち上がった私と目が合うと、安心したように微笑んで。
ドキッとする暇もなく、こっちに近づいて来た。
「なっ…連れ戻そうとしても無駄だからね?」
狭いスペース。
近い距離。
逃げ場もなく、私はあっさりと追い込まれてしまったわけで…
「次は“自主休講”って決めたんだからっ」
譲るもんか、と。
体に力を入れて、その場に踏ん張った…ものの、
「違うよ」
ストン、と。
王子様は、私の隣に腰を下ろした。
「へっ?」
「連れ戻しに来たわけじゃなくて…」
「じゃあ、何…って、ちょっと!」
「膝…貸してくれる?」