黒猫*溺愛シンドローム~Plus~




……まさか、

こんな未来が待っているとは思わなかった。

こんな春を迎えることになるとは……




「気持ちのいい朝だね。」



朝特有の空気にうんざりしながら、だらだらと足を進める私の隣で

太陽に負けないくらい、キラキラとした輝きを放っている人物。



「空は青いし、ポカポカだし…今日は、絶好のひなたぼっこ日和だよ?」



柔らかく微笑みながら、しっかり私の手を握って。

ぴったりと寄り添うように歩いている、この男。



「帰りは公園にでも寄って帰ろうか?ひなたぼっこもお花見も楽しめるよ?」



さっきから、
老若男女問わず、道行く人の視線を独り占めしてるって言うのに…

全く気づいていない、この男!



「……風歩ちゃん?」



不思議そうに私を覗き込む瞳は、文句なしに綺麗で。


こんなに近くで見つめられたら、誰だって簡単に秒殺されてしまうに違いない。


私だって…



「顔、赤いけど大丈夫?」


「…っ」



そっと触れる指先に、
急上昇する体温。









……こんな気持ちになるとは、思わなかった。


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