黒猫*溺愛シンドローム~Plus~
「何、それ?」
それは、白っぽい卵型の…置物?
……いや。
よく見れば、文字盤と秒針が…って。
目覚まし時計?
「すごいでしょ?本物のニワトリの声だよ?」
心なしか得意気に。
それを私に見せながら、続ける。
「お兄さんがさ、“風歩ちゃんにはニワトリだ”って言うから。」
「はぁっ?」
「でも、さすがに本物はつれて来られないから…。いろいろ探し回ってようやく見つけたんだ。」
そして、ハイ、と。それを私に手渡して。
「プレゼント。
これがあれば、明日の朝からはバッチリだね。」
いつもの“王子様スマイル”でにっこりと笑った。
……はい?
ニワトリ?目覚まし?
お兄ちゃん??
細かい説明はスルーして、当たり前みたいに話が完結しちゃったけど…
私には、ツッコミどころ満載だ。
「さ。支度しよっか?」
置いてきぼりの私を無視して、王子様はあくまでマイペース。
「新学期早々…いや、進級早々?遅刻したらさすがにまずいからね。」
……そうだった。
今日から新学期。
高校生活最後の1年の始まり、だ。