月夜の翡翠と貴方


「………あっそ」


深緑の瞳を暗くし、まつげを伏せたルトは、私から目を逸らした。

…怒らせた、だろうか。

前を向くルトは、何故だか少しだけ悲しそうだった。





「ここ」


スジュナが指をさしたその目的地は、演劇の劇場だった。

小さく、古びた劇場。

しかし決して人の気配がない訳ではなく、きっと開演すれば誰か来るのだろうという明るさは感じられた。


「え………ここって…」

ルトが建物を見上げ、眉をひそめる。

…こんなところに、家?

いや、ここに家、なのか。

「ここ、お家だよ」

スジュナの目は、ふざけた冗談などではなかった。

当たり前のように、劇場を指差している。


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