月夜の翡翠と貴方
…それにしても、スジュナの言う『しらない人』というのはどういうことなのだろうか。
横を見ると、疲れたのか、ルトが隣でしゃがんでいた。
そして、こちらを見ずに口を開いた。
「…………あのさ、ジェイド」
「…何?」
「さっきの、お前が恋人だとかの話だけどさ」
何故か、彼の目は真剣で。
「…うん。何?」
まさか、まだ私の発言を根に持っているのだろうか。
ルトは建物の壁際に植えられた花壇を見つめながら、言った。
「…俺は別にさ、お前を恋愛対象に見ようと思えば、見えるんだよ」
………え?
ルトの言葉に、思わず目を見開く。
「ただ、出会って間もないし、実際に恋愛するとかなったら、また別の話だけど」
「………」
「お前はまだ、なんか遠慮してる。自分を卑下してる。俺の事を主人だと思って、俺と距離を置こうとしてる。違うか?」
そう言って、こちらを見上げてくる。
ルトの目は、やはり真剣だった。