月夜の翡翠と貴方


写真に映る女性は、何処かスジュナと似た面影があって。

父親とも、まるで本当の親子のようだった。


母親と会ったことがない……とすると、母親の死後、父親がスジュナをどこかから養子にでももらったのだろうか。

予想していなかった複雑な家庭事情に、私達は混乱した。


「……でもね」

けれどスジュナは、そんなことなど気にならないというように、笑った。


「スジュナは、寂しくないの。パパとママがいるから、寂しくないの。幸せなの」


その、無理も偽りもない笑顔に、ほっとする。

きっと、いちばん大事なことだ。

スジュナが今、幸せであるかどうかが。


「幸せなんだな」

ルトが目を細め、笑う。

「うん」


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