月夜の翡翠と貴方
そして、スジュナの子供らしい明るい笑顔が、写真を愛おしそうに見つめる顔に変わる。
そのとき、私は時が止まったように、スジュナの目を見た。
………この子の目の色が、確かに変わったのだ。
「……パパとママがいれば、それでいいの」
スジュナは、大切そうに写真を抱きしめる。
その目に、私は目を見開いて釘付けになった。
スジュナは静かに、まるで呪文のように、口を動かす。
「他に、何もいらないの。パパとママがいれば、何もいらない…」
…虚ろ、だった。
その碧色の瞳は暗く、濁っていて。
焦点が、何処にあるのかわからない。
「……………」
何故。
私はその目を見て、まずそう思った。
その目は、その目は………
「スジュナ!」
遠くから聞こえたその声に、はっ、と、我に返る。
見ると、スジュナの父親が息を切らしながら、こちらへ走ってきていた。
「パパ!」
スジュナは、ぱっと顔を明るくさせ、男の元へ向かう。