月夜の翡翠と貴方


「……うん……」


私は荷物を置くと、ぼふん、と音のする寝台に腰掛ける。

ルトは上着を脱ぎながら、こちらに目を向けた。


「………大丈夫か?」

「何が…………?」

「…すげー、ぼーっとしてるけど」


ルトをわずかに見た後、視線を下へ向ける。

「……大丈夫。ありがと」


そのまま、寝台へ倒れこんだ。

天井を見上げながら、呟く。


「………スジュナちゃんは…なんであんなに明るいんだろ……」


奴隷として、少なからず絶望感を味わったはずだ。

けれど、スジュナは一般家庭の子供のそれと、何ら変わりない。

窓から見える夜空を眺めながら、ルトは答えた。

「……おっさんが、大切にしてたからだろ」

「………うん」


…それしかないだろう。

わかり切っていること。

けれどやっぱり、腑に落ちない。


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