月夜の翡翠と貴方


食事はラサバの言う通り、とても美味しかった。

ルトがラサバと他愛のない話しをしているなかで、私は小さな口を開け、美味しそうに食べるスジュナを見た。


その姿は、普通の子供で。

穢れを知らない、純粋な子供で。

少女を纏う雰囲気は、幸せそのものだった。


時折楽しそうに会話をするスジュナとラサバは、仲のいい親子と何の違いもない。

ただただ私は、その様子を見ていた。

そんな私に薄々気づいていただろうルトも、二人を見ていた。


橙の瞳の奥底で、あの虚ろな目が散らついていた。






「なーんか信じらんねーな」


宿の部屋へ入る頃には、夜空は真っ暗で、星が出ていた。




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