月夜の翡翠と貴方


ラサバはまっすぐ前を向くと、公園の木々を見つめながら、話し始めた。

私はその横顔を、静かに見つめていた。


「…私には、大切な幼馴染がおりました。生まれた時から一緒の、女の子です。……それが、妻です」


スジュナが見せてくれた、写真の女性を思い出す。

スジュナと同じ金髪碧眼と、どことなく似た顔立ち。

「その妻が二年前病で亡くなって……私の心は、酷く沈んでおりました。劇団が遠方へ行く時も、私は妻との思い出が詰まったこの街を片時も離れたくなくて……」

「……それで、ひとりで残られたのですか」

「はい」

苦笑いを浮かべるラサバの表情は、何処か憂いを帯びていて。

……亡くなった女性のことを、思い出しているのだろうか。


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