月夜の翡翠と貴方


尋ねると、ムクギは淡々と言葉を返した。


「そのようです。恐らくミラゼ様も、もうあちらで貴方を待っておられるでしょうから、急いでいただきたいのですが」


今度は、ミラゼの名が出てきた。

あちらって…どこを指しているのか。

「そうか…わかった。郵便商で用事が終わったら、すぐ行くよ」

「よろしくお願いします」

一礼すると、ムクギは路地を出て、大通りの人波の中へ消えて行った。


「………リロザさん、なんて?」

手紙を見つめる、ルトを見上げる。

「ん〜…なんか、今夜酒場に来いって。今日酒場は開いてない日なんだけど」

ふぅ、とため息をつくと、ルトは私の手を引いて、郵便商の建物へ向かった。






酒場の階段を降りると、カウンターにミラゼとリロザの姿があった。


「遅い」

眉間にしわを寄せたリロザが、こちらを見ている。

「仕方ないだろ。こっちだって色々やることあるんだよ」

そう言って、ルトが近くの椅子に腰掛けた。

私も隣の椅子に座る。


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