月夜の翡翠と貴方
尋ねると、ムクギは淡々と言葉を返した。
「そのようです。恐らくミラゼ様も、もうあちらで貴方を待っておられるでしょうから、急いでいただきたいのですが」
今度は、ミラゼの名が出てきた。
あちらって…どこを指しているのか。
「そうか…わかった。郵便商で用事が終わったら、すぐ行くよ」
「よろしくお願いします」
一礼すると、ムクギは路地を出て、大通りの人波の中へ消えて行った。
「………リロザさん、なんて?」
手紙を見つめる、ルトを見上げる。
「ん〜…なんか、今夜酒場に来いって。今日酒場は開いてない日なんだけど」
ふぅ、とため息をつくと、ルトは私の手を引いて、郵便商の建物へ向かった。
*
酒場の階段を降りると、カウンターにミラゼとリロザの姿があった。
「遅い」
眉間にしわを寄せたリロザが、こちらを見ている。
「仕方ないだろ。こっちだって色々やることあるんだよ」
そう言って、ルトが近くの椅子に腰掛けた。
私も隣の椅子に座る。