月夜の翡翠と貴方
ミラゼがふふ、とお得意の笑みを浮かべて、こちらへ手を振っていた。
昨日の今日で、依頼屋の事を聞いたばかりである。
少しどきりとしながらも、手を振り返した。
至って向こうは普通だ。
こちらも、普段通りでいる事にしよう。
酒場には私たちしかおらず、昨日の騒がしさが嘘のように感じる程、静けさがあった。
人がいないだけで、酒場はこんなにも違うのだ。
「で?なに、話したいことって」
ルトが尋ねると、リロザは「うむ」と一度咳払いをした。
「実は…….だな。ルトとミラゼに、頼み事があるのだ。…ふたりには、依頼、と言った方がわかりやすいか」
依頼。
その言葉に、思わず喉を鳴らす。
「…………依頼?」
ミラゼが、訝しげにリロザを見た。
「ああ。ふたりに私の護衛をして欲しいのだ。実は明日から、私は少し遠出をしなければならなくてだな…………」
「ちょ…ちょっと待て!」
ルトが慌てたように、リロザの話を遮った。