月夜の翡翠と貴方
「………」
目の前の綺麗な寝顔を見つめる。
…寝顔まで整っているのが、なんだか非常に悔しい。
悔しいという表現で正しいのかもわからないが。
そっと頬に触れる。
ルトが私に触れることはあっても、私からはあまりないなと思った。
この間振り払われてしまってからは、益々触れないようにしていたが。
「…………喉渇いた」
ぽつりと呟くが、寝息が聞こえるだけ。
ふに、と頬に指を埋める。
…ルトは、私をどう思っているのだろう。
考えるべきではないし、まず考える事自体がおかしい事ではあるのだが。
やっぱり穏やかに寝ているルト。
なんだか、私だけこんなにぐるぐるしているような気がする。
触れ合う体温が、心地良い。
しばらくこのままがいいから、起こすのはやめよう。