淫靡な蒼い月
微睡(まどろみ)
兄さま。
愛しい兄さま。
白い衣を纏い、わたくしは今宵、兄さまに捧げに参ります。
わたくし自身を……。
……いつから兄さまを“男”として愛していたのか……もう、遠すぎて判らない。
愛しい耳元に唇を寄せ、わたくしはささやきます。
兄さまの名を……。
……あ。
兄さまの腕が、わたくしに触れる……。
絡み付く。
ああ、兄さま……
どうかその唇を、離さないで。
その腕を、解かないで……。
ずっと、胸に秘めておくつもりでいましたが、今宵の宴で、心を決めました。
なぜ、結婚をお決めになったの?
その方を、本気で愛してらっしゃるの?
わたくしの気持ちは、微塵も兄さまに、届いていなかったのですか?
こんなに愛していると言うのに。
今宵、兄さまは浅く深い眠りに落ちていらっしゃる。
先ほどのお酒に、わたくし、薬をもりましたの。
だから、何度でも呼んでさし上げますわ。
兄さまの愛しい、あの方の声色を真似て。
兄さまの名を、何度でも……。
離さないで、兄さま。
その熱い肌に、わたくしを永遠に閉じ込めて……。