淫靡な蒼い月

シーツ


さぁ、犯そう。


この真白いシーツの海で、僕は今夜も“魔”になる。


嫌味なくらい白いこの薄い海に、深い情はいらない。


ただ“欲”があればそれで充分。


“愛”なんてただのおまけだ。


僕はただ、果てたいだけだし、女だって変わらない。


貫いてほしいだけ。


結局人間なんて、ちっぽけで下等で腐ってんだ。


このシーツにすら叶わない存在。


それが、僕を含めた“人間”


目の前にいる女だって、ただ、無垢に見えるだけ。


その白くて清楚な制服の下には、獣がいるんだ。


その唇に触れて少し深く刺激さえしてやれば、、直ぐにあんな声を出すに決まってる。


そうさ、皆、そうだった。


僕は、目の前の女の白い制服を荒々しく剥ぎ取り、シーツの海にうつ伏せに組敷く。


後はいつもの手順。


気が狂うほど、動けばいい。


「……あなた、寂しいのね」


女が、そう、呟いた。


「“愛”を、あげるわ。深くて果てしなく大きな、そう、この白い海よりも遥かに広い愛を――」


消毒液の臭いが微かに僕の鼻孔をかすめた次の瞬間。


シーツがふわりと宙に浮き、そして――


女の背中から、純白の羽毛が光と共に飛び出し、柔らかななにかに、僕は飲み込まれた。


“天使”……?


甘くて溶けそうな媚薬に体が浮き上がる。


「さぁ、存分に味わいなさい」


女の声に包まれた。


「せん、せ……?」


羽が舞う。


犯すのは、僕のはずだったのに……。


深い海に飲み込まれる。


肌が……焼けるように熱い。


これが……“愛”……?


羽が舞う


羽が舞う


二人だけの、保険室


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