淫靡な蒼い月

宴の蝶



ねぇ、忘れさせてよ。


もっと、もっと強く、力強く、あたしを貫いて。


まだまだ、全然足りない――。


あたしは蝶


紫の、貪欲と言う名の蝶


ひらひらと、夜を飛んでは、甘い蜜を求めてさまよう。


通りすがりの男の肩に止まる。


今夜も、名前も知らない男に抱かれ、媚声をあげる。


ねぇ、もっと、もっとよ。


やめないで。


やめてはだめ。


やめたらその途端、寂しさが襲う。


叶わぬあの人を、思い出してしまうから――


まるで、宴の後のように、心がしぼんで、からからに乾いてしまうから――


だから、決して、やめないで。


あたしを止めないで。


あたしは蝶


蜜を、宴を求めて飛び続ける。


愛しいあの人は、あたしを見ない。


あたしがどんなに美しくなったとしても、見てくれない。


だって、あなたは“義父”


愛しているのは、あたしを産んだあの女性(ひと)だから――。



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