淫靡な蒼い月

美しい虚像



シーツに舞う、長い黒髪


肌を光らせる汗と、漂う甘い香りに、クラクラする。


繰り返される加重にベッドが悲鳴をあげる中、わたしは、今夜も激しくきみを犯す。


世間には絶対に知られてはならない。


二人だけの強固な秘め事。


はだけた白いシャツ


わたしの背中に爪をたてる指


歪む顔


叫ぶ唇


「自分で動いてごらん」


親子ほども違う若いきみ


ふわりと、黒髪が宙を舞った。


「ああ……っ」


一層激しくなる動きに、きみが天を仰ぐ。


もう、限界が近いのだろう。


それにしても何と、美しいことか。


華奢な腰に手を回して支えてやる。


激しく頭を振るたびに乱舞する髪が、たまらなくわたしをそそる。


「お、とう……さ、ん……!」


きみが遂に敗北の声をあげ、果てる。


白くて美しい羽が、わたしの上で舞う。


「杏子……!」


苦しくなり、わたしもたまらず、彼女の名を呼んだ。


きみにそっくりな、しかし、もう、この世にはいない妻(ひと)


「おとうさん、おとうさ……ん……!」


果てて尚、感じるきみが、たまらなく愛しい。


わたしの上で、少女のように乱れるきみ


引き締まった胸が、汗で光っている。


離さない。


離せない。


わたしが作り出した“美しい虚像”である、我が息子よ





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