淫靡な蒼い月



向かい合ったカフェ――


砂糖を取ろうとして、あなたとあたしの指が微かに触れた。


瞬間――


指先にピリピリと電気が走り、二人とも慌てて手を引っ込めた。


「……ご、ごめんなさい」


「う、ううん」


それが、あたしたちの初めての会話だったね。


冬の乾燥した店内で、最初はただの静電気だと想っていた。


けど、違った。


あなたも、それを感じたんでしょう?


あれは確かに“トキメキ”だった――。


だからあたしたち、こんなに惹かれたんだよね。


だけど、この恋は禁忌。


だってあたしたち、戸籍上は同い年の兄妹


血は繋がらないけど、同じ氏を名乗る事に変わりはない。


初めて逢ったのも、親たちに引き合わされた席だった。


「電気、消して――」


明日には両親が旅行から戻る。


これが、最後の夜


夜明けと共に、あたしたちは“兄妹”に戻る


あなたの指が、ろうそくに火を点す。


二人でそう決めた


今夜を、最後にしようと――


愛してる。


もう二度と口にしない。


柔らかな唇にも、触れるのは今夜まで


「火、消すよ」


あなたの息が、長く伸びて炎を吹き消す。


最後の宵


あたしは、静かに目を閉じた――。




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