淫靡な蒼い月

絵筆



衣が、柔肌を滑り落ちてゆく


筆先が、そっと先端に触れ


あたしは思わず、声をあげた。


途端


柔らかな唇に、口を塞がれる。


とろけるような甘さに、目眩がした。


「動かないで」


そっとささやいては、耳たぶを甘噛みする唇


中心が焼け始める。


また、筆先が胸の先端をくすぐる。


こらえる首筋に唇が触れ、肩が震えた。


「ダメだよ、きみは今、モデルなんだから」


どこか古い空気の漂う美術室


大きなキャンバスの狭間で繰り広げられる、甘美な時――


「ダメ、もう――」


筆先の微かなタッチに花びらの震えが止まらない。


まるで薔薇色のような甘い吐息に、自分で酔いしれる


「仕方ないね」


彼が、絵筆を置いた。


始まる


めくるめく、快感の海に、飲み込まれる


「――」


唇が開き、あたしは、彼の名を、うわ言のように呼び続けた。


半分の血の交わりを持つ、彼の名を――


筆先のような、微かな声で――





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